2009/04/28 更新
信用リスクは、広義では株式、債券、ローン、売掛金などを含む企業の倒産リスク全般を指します。従来、企業の信用リスクは、債務保証や倒産保険などの契約形態でヘッジされてきましたが、これを国際的に統一化し流通可能な取引形態にしたものがクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)です。
言い換えれば、CDSは企業の信用リスクを取引するための取引手法です。
CDS取引は、主に金融機関同士の相対取引で行われております。CDS取引においては信用リスクをヘッジしたい主体(プロテクションの買い手A)が、信用リスクを取ろうとする主体(プロテクションの売り手B)に、取引期間中、定期的に保証料に該当するフィー(以下「固定クーポン」といいます)を支払う代わりに、対象となる信用リスクの主体(以下「参照組織」といいます)に一定の事由(破産、債務不履行、債務の条件変更など、以下「クレジット・イベント」といいます)が発生し、それが客観性を持って参加者に認められた場合、プロテクションの売り手と買い手との間で決済がなされます。期間中にクレジット・イベントの発生がなければ、プロテクションの売り手Bから買い手Aに対する支払いが発生しないので、プロテクションの買い手Aから売り手Bに対して固定クーポンが支払われるのみで契約は終了します。
クレジット・イベントが発生した場合は通常、ISDA(国際スワップ・デリバティブズ協会)により規定されるオークションによって最終価格が決定され、決済が行われます。オークション結果は、マークイット社とCreditex社が取りまとめており、以下のリンクで見ることができます。

クレジットインデックスの取引手法は、クーポンや満期などの条件があらかじめ定められている社債の取引と類似しています。クレジットインデックスの場合、個別のCDSと同様にリスクの外し手(プロテクションの買い手)がリスクの取り手(プロテクションの売り手)に対して、あらかじめ定められたフィー(以下、「固定クーポン」といいます)を四半期毎に支払います。固定クーポンはインデックス・シリーズの作成時(例えばMarkit iTraxx Japan シリーズ11の場合、500bpsとなっています)に決定され、シリーズが終了されるまで変更はありません。また、インデックスの取引では、Markit iTraxx Japanが日々表示するスプレッドではなく、固定クーポンや取引日からシリーズ終了までの期間等を考慮して計算される100%を額面とした価格(以下、「インデックス取引価格」といいます。)が使われます。取引を開始する際、インデックス取引価格により売り手と買い手の間で支払いが発生します。(詳しくは下記のクレジットインデックス取引例をご覧ください)。取引参加者は、ベンダーの計算エンジン等を利用してインデックス取引価格の算出を行っています。マークイット社の計算エンジンは無料で提供されており、以下のリンクから入手可能です。
以下に、クレジットインデックスの取引例をご紹介します。
プロテクションの買い手Aの取引例:プロテクションの買い手Aは、プロテクションの売り手Bを相対としてクレジットインデックス取引を行うことで、取引時の支払い、期間中の固定クーポンの支払い、決済時の支払いといったキャッシュ・フローが発生します。
まず、基本条件として下記のような取引を想定したとします。
1. インデックス開始日:2010年9月21日 (2010年9月20日は祝日のため翌日21日が開始日)
額面100%、固定クーポン100bpsのクレジットインデックス(5年物)が開始。
2.取引開始日:2010年11月30日
プロテクションの買い手Aがプロテクション売り手Bより、想定元本1億円のインデックスのプロテクションを購入。取引開始日のインデックスのスプレッドは110bps。
3.取引決済日:2010年12月3日(=取引開始日+3営業日)
4.固定クーポン支払日:2010年12月20日
プロテクションの買い手Aはプロテクションの売り手Bに対して固定クーポンの支払。
5.取引終結日:2011年3月14日
プロテクションの買い手Aは、スプレッドが130bpsまで上昇した3月14日、反対売買を行うことで取引を終結。
6.取引決済日:2011年3月17日(=取引終結日+3営業日)
次に、取引内容を詳しく説明いたします。
インデックス取引開始時に、プロテクションの買い手Aはプロテクションの売り手Bに対して、「アップフロント(インデックス開始日のインデックス価格(額面100%)と取引開始日のインデックス価格の差額)」と経過利子の差額を支払います。例えば、取引開始日における同インデックスのスプレッドが 110bpsの場合(固定クーポン100bpsより10bps上昇)、インデックス価格は99.52%(マークイット社等の計算エンジンで算出された価格)となります。アップフロント及び経過利子は以下のように計算され、取引開始日より3営業日にアップフロントと経過利子の差額決済が行われます。
よって1~3では、プロテクションの買い手Aはプロテクションの売り手Bに対して、上記の差額285,556円(= 480,000円-194,444円)を支払います。
プロテクションの買い手Aはプロテクションの売り手Bに対して固定クーポンを支払います。
プロテクションの買い手Aは、反対売買を行うことにより、取引を終結することを決定したとします。例えば、取引終結日のスプレッド130bps、それに相当するインデックス価格98.63 %の場合、プロテクションの買い手Aは、決済日までの経過利子を支払い、反対売買による差額分(インデックス開始日のインデックス価格(額面100%)と取引終了日のインデックス価格(98.63%)の差額)を受け取ることにより取引を終結します。
プロテクションの買い手Aは、上記の差額1,136,667円(=1,370,000円 – 233,333円)を受け取ります。
| 日付 | イベント | プロテクション買い手Aキャッシュインフロー(+) | プロテクション買い手Aのキャッシュアウトフロー(-) | プロテクション買い手Aのネットキャッシュフロー |
| 9月21日 |
インデックスのロール日: 固定クーポン:100bps |
- | - | - |
| 11月30日 |
プロテクション買い手が110bps, 1億円 のプロテクションを購入 |
- | - | - |
| 12月3日 | 11月30日付けの取引決済 |
経過利子 194,444円 |
アップフロント 480,000円 |
-285,556円 |
| 12月20日 | 四半期毎のクーポン支払い | - |
クーポン支払 250,000円 |
-250,000円 |
| 3月14日 |
プロテクション買い手が 130bpsで反対売買を行う |
- | - | - |
| 3月17日 | 3月14日付けの取引決済 |
反対売買による差額分 1,370,000円 |
経過利子 233,333円 |
1,136,667円 |
| キャッシュフロー合計 | 1,564,444円 | 963,333円 | 601,111円 |
インデックスを構成する銘柄にクレジット・イベント(信用事由)が発生した時に、リスクの取り手(プロテクションの売り手)が当該銘柄から発生した損失に相当する分を、リスクの外し手(プロテクションの買い手)に支払うこととなります。その後、インデックス構成銘柄からはクレジット・イベントが発生した銘柄が除外され、クレジット・イベント発生銘柄に相当する元本が減額されてインデックスは継続されます。例えば、想定元本が50億円で、構成銘柄が50銘柄であるインデックスでは、1銘柄(1銘柄当たり1億円の想定元本)にクレジット・イベントが発生した時、対象銘柄を除いた49銘柄、想定元本を49億円として取引は継続されます。なお、インデックスを構成する銘柄のクレジット・イベントや決済方法についてはISDA(国際スワップ・デリバティブズ協会)により定められております。
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