2006/04/20 更新
顧客がいわゆる現物取引として株券を買い付けた場合には、現実に株券を入手することができるため名義書換の手続きを行うことにより株主としての権利を直接行使することができます。
これに対し、信用取引で買い付けた場合には、証券会社はその買付株券を担保として拘束し、これを他の信用取引で売付けを行う顧客に貸し付ける、あるいは証券金融会社に貸借取引で融資を受けるための担保として差し入れます。証券金融会社ではこれを他の貸株申込みのあった証券会社に貸し付けるため、信用取引で当該顧客が買い付けた株券がどれなのかを特定することができない制度となっています。同様のことから、顧客が現引きにより決済する場合に特定の株券を渡すことはできないことから、あらかじめ同種同量の株券を渡すこととしています。
信用取引で売付けを行った場合には、顧客は証券会社から借り入れた株券を売却しているのですから、借り入れた株券と同一のものが顧客の手元にあるはずがありません。このため、信用取引で売付けを行った場合においても、顧客が弁済する株券は同種同量のものでよいこととしているわけです。
ただし、同種同量の株券の授受で良いと言ってもその銘柄に帰属していた配当請求権や新株予約権等が具体的に株券から分離独立した権利として発生する場合、すなわち権利落ちとなった場合には、分離した内容が持つ利益が経済的に評価されるものであれば、その分だけ株式の評価額が低減されることとなります。このため、権利落ち以降に、信用取引で買付けていた顧客が借り入れていた資金を弁済した場合、同種同一株数の株券を渡されても権利分は既に剥離してしまっているので、買付けを行った時点のものと同種ではあっても同量のものとは言えません。したがって、この部分については何らかの補償を受ける必要があります。
また、同様に、信用取引で売付けを行った顧客が、権利落ち以降に借り入れていた株券を弁済する場合は、剥離してしまった分に相当するものを別に補償しなければ決済を完了することができません。
以上のように、信用取引を行っている銘柄について配当請求権や株式分割等に係る権利落ちが行われた場合には調整が必要であり、この調整を「信用取引の権利処理」と言っています。
証券取引所では、権利処理方法を制度信用取引についてのみ定めております。したがって一般信用取引についての対応については、顧客と証券会社の間で取り決めることとなります。これは、一般信用取引については、売付けのために必要な株券については証券会社が所有するものではない場合は自らが調達するものに限られることから、調整内容も個々の調達条件に応じた内容であることが必要となるため、証券金融会社による調達を前提とした一律的な調整内容では機能しないことが予想されるためです。
制度信用取引の権利処理の対象としては、
であることが必要であり、具体的には配当金、株式分割による株式を受ける権利、新株予約権等を対象として行っています。
一方、株主総会の議決権、株主帳簿閲覧権、株主優待券等においては、これを権利として処理を行わないものとしています。
配当金については金額が明示されているので、同額を対象とします。
具体的には1株当たりの配当金額から源泉徴収税額相当分を控除した額を、信用取引で買付けている顧客は証券会社から受け取り、売り付けている顧客は証券会社に支払います。
ここでやり取りをする額は「配当」そのものではなく「配当金相当額」です。あくまでも調整額ですので、控除するのも「税金」ではなく「税金相当額」を差し引くこととしています。
制度信用取引によって売買している銘柄に、株式分割による株式を受ける権利又は新株予約権等の権利が付与された場合には、次のいずれかの調整方法により、売り方・買い方双方の不公平をなくします。
株式分割の比率に応じて、制度信用取引の売付株数又は買付株数を増加し、約定値段を減額します。
| (分割前) | (分割後) | |
| 買付(売付)株数 | 1000株 | 2000株 |
| 約定値段 | 900円 | 450円 |
ただし、分割比率が1:1.5、1:2.5といった小数点を含む株式分割の場合、調整後の株数に単元未満株が生じることなり、反対売買による信用取引の弁済ができなくなってしまうことから、金銭による権利の調整(「II 新株予約権又は売買単位の整数倍以外の新株式等が割り当てられる場合」参照)が行われます。
なお、この方法による権利処理は平成18年5月31日以降の日を基準日とする株式分割から実施されます。
証券取引所が定める権利処理価格を最初の売買値(約定値段)より引き下げます。
| (分割前) | (分割後) | |
| 買付(売付)株数 | 1000株 | 1000株 |
| 約定値段 | 900円 | * 610円 |
*分割後約定値段=最初の売買値(900)—権利処理価格(290) (権利処理価格はあくまで例示です。)
実務的には、証券金融会社が付与された新株式又は権利を金銭に換価した額を権利処理価格とし、これに基づく金銭を顧客と証券会社の間において授受することにより処理を行います。
証券金融会社において貸株よりも融資の方が多い場合には、手元に融資担保株券があるので、証券金融会社は自社名に名義を書き換えて一時的に権利を取得してこれを売却処分して金銭換算します。
逆に、貸株の方が融資よりも多い場合には、証券金融会社はその超過分を外部の株主から借りているので、剥離した権利を証券金融会社が買い付けて返済しなくてはならないため、その際の買付けに要した費用をもとに金銭換算します。
では、一般的な前者(貸株よりも融資の方が多い銘柄)のケースについて手続きをご説明しましょう。具体的には、証券金融会社は新株式等について融資申込みをしている証券会社から新株引受申込みを受けたのち、これにより全株消化されなかった場合には、証券金融会社に割り当てられる新株式等(入札株数)について、競争入札方式(権利入札)により売却処分します。
この入札による落札代金総額を落札株数で除して算出した落札平均価格に新株式割当率を乗じて権利処理価格を算出します。
また、新株引受申込みにより全株消化した場合は、権利付売買最終日の終値等に基づいて算出した価格を権利処理価格とします。
証券会社は、買付けを行っている顧客には、買付株数に権利処理価格を乗じた金額を交付し、一方、売付けを行っている顧客から、売付け株数に権利処理価格を乗じた金額を徴収します。ただし、その交付・徴収は、貸付け代金から差し引く又は売付け代金から差し引く形で行われるので、顧客の債務の一部弁済が行われることとなります。
制度信用取引を行っている銘柄について新株予約権又は売買単位の整数倍以外の新株式が割り当てられることとなる株式分割等が行われた場合には、証券金融会社において行われる権利入札により決定される権利処理価格で約定値段を調整することにより、権利の処理が行われます。
では、権利入札の仕組みについて具体例に基づいて説明します。
<条件>
例えば、証券金融会社におけるA銘柄の権利付き売買最終日申込み現在の貸借取引残高が、貸株残高 20,000株、融資残高50,000株あり、分割比率が1:1.5の株式分割が行われると仮定します。この場合、証券金融会社において処理される株式数は、証券金融会社名義となる融資超過分の30,000株に対して割り当てられる15,000株となります。

証券金融会社は権利入札に先立って、まず、A銘柄の権利付最終日までに、A銘柄の融資先証券会社から、それぞれの融資残高株数の範囲内で引き受けの申込みを受け付けます。この引受けは、証券会社だけでなく、制度信用取引で買付けを行っている顧客も取引先証券会社を通じて買付株数の範囲内で申込み可能です。この申込み株数が証券金融会社への新株割当数を超過した場合は、各証券会社の申込株数に応じて按分割当を行います。

制度信用取引によって売買している銘柄に、株式分割による株式を受ける権利または新株予約権等の権利が付与された場合には、証券取引所が定める権利処理価格を最初の売買値(約定値段)より引き下げて、売り方・買い方双方の不公平をなくします(注1)。これを制度信用取引における権利処理といいます。
この度、株式分割の場合の権利処理につきましては、平成18年5月末日以降の日を基準日とするものから、次のとおり分割比率によって権利処理の方法が一部変更となっております(注2)。
株式分割の比率に応じて、制度信用取引の売付株数又は買付株数を増加し、約定値段を減額します。

権利落日以降の買付(売付)株数は 2,000株、約定値段は450円となります。
※分割後株数(2,000株)=分割前株数(1,000株)×株式分割の比率(2)
分割後約定値段(450円)=最初の売買値(900円)÷株式分割の比率(2)
証券金融会社において行われる権利入札により権利処理価格を決定します。

権利落日以降も買付(売付)株数は1,000株のまま変わりません。
約定値段は最初の売買値(900円)から権利処理価格(290円)を控除した610円になります。
※お客様は新株を取得できない 代わりに新株を金銭に換算した額(権利処理価格)を受領します。
但し、実際の授受はなく、約定値段から権利処理価格を控除することにより調整します。
(ご注意)株式分割後の約定値段は、株式分割の比率で除算した600円となるわけではありません。
(注1)
制度信用取引では、お客様が買い付けた銘柄に係る株券は、担保として証券会社または証券金融会社に留保されます。当該銘柄に株式分割による株式を受ける権利または新株予約権等の権利が付与された場合、当該権利の行使をお客様が直接行うことができないため、証券取引所が制度信用取引の権利の処理についてルールを定めています。
(注2)
株式分割に係る効力発生日が株式分割の基準日の翌日となる証券決済制度の改正を受けての変更です。
(注3)
分割比率が1:1.5、1:2.5といった小数点を含む株式分割の場合、1.の調整方法では分割後に単元未満株が生じることとなり、反対売買による信用取引の弁済ができなってしまうことから、従来と同様に、金銭による調整方法となります。
(注4)
一般信用取引による権利の調整は、各証券会社の定める方法によります。
| 権利処理方法の一部変更について (印刷用) |
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